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新しい手術器械を使用する前に ~新品鋼製器具の油抜きの方法~

administrator 2023.03.06 2023.03.06

新しい手術器具を使用する前に・・・

新しく購入した一般鋼製器具は、器具を保護するために少量の「工業用油」がついた状態で出荷されています。

この油は製造上必要不可欠なものであり、製品の酸化を防止する役目があります。出荷時には工業油は取り除かれておりません。

 

購入後に洗浄・滅菌されているかと思いますが、いつも通りの洗浄のみで滅菌(高温状態)処理を行いますと、器具が茶色っぽく変色した熱焼け(熱変性)した状態になりますので注意が必要です。また、その状態のままご使用を続けると、熱焼けを落とすことが難しくなり、器具を痛めてしまい寿命も短くなります。

そのため、新品器具のご使用前には必ず「油抜き作業」を行ってください。

長くお使いになるためにも「油抜き」は非常に重要なプロセスとなります。

この作業を行うことで、器具表面に不動態被膜が形成され、錆びにくい状態を保つことができます。

 

※実験用途など器具を滅菌しないでご使用される場合は、この作業は不要です。

※油抜き作業を実施しても新品機材は不動態化が充分でないため、滅菌時の条件によっては変色を伴う場合がございますのでご留意ください。

 

本記事では油抜きの基本的な方法を説明いたします。

 

 

新品鋼製器具の油抜きの方法

鋼製器具を洗浄する方法として「浸漬洗浄」「用手洗浄」「超音波洗浄」などがありますが、鉗子や持針器などに効果的な洗浄方法をご紹介いたします。 

 

 

洗浄

浸漬洗剤溶液を用意し、スポンジや歯ブラシなどを使って、器具の表面などに付着している油をよく洗い取り除いてください。特に製品のボックス部や溝などを丁寧にブラッシングしていただくと効果的です。

 

お薦めの方法

油膜除去用洗浄/添加剤 S-CLEAN OR(クリーンケミカル社製)を用いた洗浄

 

浸漬槽にお湯で浸漬・超音波洗浄用のアルカリ洗浄剤(S-CLEAN 20/S-CLEAN 30/ S-CLEAN 70等)を0.5%に希釈し、更に S-CLEAN ORを2%(2〜5%)添加します。

新品器材を1〜2時間程度浸漬すると、付着している加工油や防錆油を剥離溶解することができます。

なお、可能であれば超音波洗浄が好ましく、液温は50〜80℃以上に保つと洗浄性が向上します。

 

ワンポイントアドバイス

器材にアルミニウム部分が含まれている場合は、アルカリ洗浄剤を使用せずにSクリーンORのみを使用してください。

樹脂、ゴム、プラスチック部分がある器材には使用しないで下さい。

 

 

すすぎ

洗剤が残らないようにしっかりと濯ぐことが大切です。

濯ぎに使用する水はROを推奨いたします。地下水や水道水には器具に悪影響を及ぼすミネラルや塩素などが含まれており、腐食や孔食などの原因になることがあります。

 

RO水・・・原水にRO膜(逆浸透膜)を用いて不純物をろ過した水です。ミネラルや微生物、化学物質などが限りなく取り除かれています。

 

 

乾燥

洗浄、濯ぎ後は、速やかかつ完全に乾燥してください。水分が残っていると錆び、シミ、焼けの原因になります。

 

 

注油

器具のネジ部や関節部など可動する部分に「医療用潤滑剤」を注油します。

医療用潤滑剤には潤滑作用・清浄作用・防汚/防水/防錆作用があります。

 

潤滑作用

鉗子などの関節部は使用する中で摩擦(抵抗)が生じますため、局部的な熱が発生し、凝着摩擦(かじり)に発展します。

潤滑剤は潤滑作用によって摩擦を緩和いたします。

また、関節部が動くにはガタ・クリアランスが必要です。

メーカーや製品の種類によってガタの具合が違っていたり、使用による摩耗で徐々にガタが大きくなります。それを潤滑剤が隙間を埋めてクッションの役割となるため、使用中にガタを感じずに使用することができます。

 

清浄作用
  • 潤滑剤の清浄作用によって、摩擦で発生した摩耗粉を潤滑剤が取り込み外へ排出します。

 

防汚/防水/防錆作用

鉗子などの関節部は汚れが入ると取れにくく、水が入ると乾きにくくなります。それらは錆びにつながり、動きにも影響します。

潤滑剤には汚れや水の侵入を防ぐ役割もあります。

 

※潤滑剤の種類(水溶性/油性)によって効果に違いがございますので、ご使用される製品の添付文書をご参照ください。

 

 

滅菌

滅菌処理(高圧蒸気滅菌)を行います。

 

※鋼製器具の添付文書に記載の方法を守って洗浄・滅菌してください。

 

 

お薦めのメンテナンス商品

新品機材の初回洗浄用洗浄剤

S-CLEAN OR・・・油膜除去用洗浄/添加剤

(クリーンケミカル社)

ワンポイントアドバイス

ステンレス製の器材の場合、アルカリ洗浄剤と混合して使用されることが推奨されています。

 

 

血液やたんぱく質を除去するための洗浄剤

<浸漬洗浄用>  

S-CLEAN EM・・・蛋白質分解酵素配合 中性浸漬用洗浄剤

S-CLEAN TE-1・・・多酵素配合 弱アルカリ性浸漬用洗浄剤

(クリーンケミカル社)

 

<超音波洗浄>

S-CLEAN 30・・・除菌剤配合 アルカリ性超音波洗浄機用洗浄剤

S-CLEAN 70・・・アルカリ性超音波洗浄機用洗浄剤

(クリーンケミカル社)

 

 

潤滑防錆剤

スティンミルク S-200・・・浸漬用潤滑防錆剤

スティンミルク Smooth・・・スプレー式潤滑防錆剤

(クリーンケミカル社)

※スティンミルクS-200は、200倍に希釈した溶液に器具を浸漬して使用します。

 

 

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