手術の現場で欠かせない医療機器、電気メス。単に「組織を切る・凝固する」というシンプルな機能だけでなく、近年の技術革新により、その種類や性能は多岐にわたります。今回は、手術の目的や規模に応じて、どのような電気メスが選ばれているのか、「ハイエンド」「ミドルエンド」「簡易型」という3つのカテゴリーに分けて、それぞれの特徴と主な用途をご紹介します。
複雑な手術を支える多機能・高性能:ハイエンド機種
心臓血管外科や脳神経外科、消化器外科など、高度で精密な手技が求められる手術では、ハイエンドの電気メスが活躍します。これらの機種は、単に組織を切開・凝固するだけでなく、手術の安全性と効率を飛躍的に高める多彩な機能を搭載しています。
最大の特徴は、豊富な出力モードとパワフルな性能です。ハイエンド機種は、微細な血管の止血から広範囲な組織の切開まで、術中のあらゆる状況に的確に対応できる多彩なモードを備えています。
特に注目されるのが、血管シーリングシステムです。これは、特殊なデバイスを用いて血管を圧着し、高周波電流で組織内のコラーゲンを融合させることで、糸を使わずに血管を確実に閉鎖(シール)する機能です。これにより、手術時間の短縮や、体内に異物を残さないことによる術後合併症のリスク低減が期待できます。
組織の状態を瞬時に検知して最適なエネルギーを供給する最新の出力制御技術も、複雑な手術を安全かつスムーズに進めるために不可欠な機能です。
- 主な使用診療科:心臓血管外科、脳神経外科、消化器外科、胸部外科、泌尿器科など
幅広い術式に対応する万能型:ミドルエンド機種
一般外科や整形外科、婦人科など、幅広い診療科で日常的に行われる多くの手術に対応できるのがミドルエンド機種です。ハイエンド機種ほどの多機能性はありませんが、基本的な性能は十分に高く、コストパフォーマンスに優れているのが特徴です。
このクラスの電気メスは、安定した切開・凝固性能はもちろんのこと、腹腔鏡手術など、特定の術式に特化したモードを備えていることもあります。一台で様々な手術に対応できる汎用性の高さから、多くの病院で主力機として導入されています。
ハイエンド機種に搭載されている血管シーリングシステムを、このミドルエンド機種に接続して使用するケースも増えており、施設のニーズに応じて機能を拡張できる点も魅力の一つです。
- 主な使用診療科:一般外科、整形外科、婦人科、呼吸器外科、泌尿器科など
外来やクリニックでの処置に最適:簡易型・ポータブル機種
クリニックや病院の外来、小規模な手術室での使用を主目的として設計されているのが簡易型の電気メスです。皮膚科や形成外科、美容クリニックでの小腫瘍の切除や止血といった、比較的簡易な処置でその真価を発揮します。
このカテゴリーの製品は必要十分な切開・凝固機能に絞り込むことで、小型・軽量化を実現しています。操作もシンプルで、使いやすさが重視されています。
大掛かりな設備は必要なく、限られたスペースでも安全に高周波手術を行える手軽さが、開業医の先生方を中心に支持されています。
- 主な使用診療科:皮膚科、形成外科、美容外科、整形外科(外来)、耳鼻咽喉科など
電気メスと一言でいっても、その性能や特徴は様々です。求められる手術のレベルや、使用される環境に応じて、最適な一台が選ばれています。弊社では、先生方のニーズに合わせた多彩なラインナップをご用意しておりますので、ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。