VTIとは
心臓が全身へ血液を送り出す働きを把握することは、循環状態を理解するうえで重要です。
循環動態の評価には様々な指標が用いられますが、その評価に関連する指標の一つとして、超音波検査(心エコー)で測定される速度時間積分値(VTI:Velocity Time Integral)が知られています。VTIは、心臓から送り出される血液の流れる速さを時間方向に積み重ねて表した値であり、1回の拍動で血液がどの程度前方へ進んだかを示す指標とされています。
一般的には、心臓から血液が流れ出る部分である左室流出路(LVOT:Left Ventricular Outflow Tract)で測定されることが多く、LVOT VTIとして評価されます。LVOTの断面積と組み合わせることで、1回拍出量(SV:Storoke Volume)の推定に用いられる場合もあり、心臓のポンプ機能や循環動態を把握する際の参考情報の1つとして利用されています。また、VTIは超音波検査によって測定されるため、カテーテルなどの侵襲的な手技を伴わずに評価できる可能性がある指標として、集中治療領域や循環器領域における診療などで活用されることがあります。
VTIの値の解釈について
VTIは、1回の心拍で血液が前方へ進む距離を示す指標であるため、LVOTの断面積と組み合わせることで、SVの推定に用いられる場合があります。そのため、心臓のポンプ機能や循環動態を把握する際の参考情報の1つとして利用されています。
一般的に、以下のような可能性が示唆されることがあります。
VTIが高い場合:1回の拍動で送り出される血液量が比較的多い可能性を示唆
VTIが低い場合:心臓から送り出される血液量が少ない可能性を示唆
例えば、心機能の低下や循環血液量の不足など、心臓から十分な血液が送り出されにくい状況では、VTIが低値となる場合があります。一方で、循環状態が改善した場合や治療介入後などに、VTIが上昇することがあります。ただし、VTIの値は心拍数、前負荷、後負荷、心収縮力など複数の要因の影響を受けるため、単独で評価するのではなく、血圧や血液検査、尿量、他の心エコー所見などと合わせて総合的に解釈することが重要とされています。
補助循環療法における循環動態の評価
このような循環評価は、心臓の働きが低下した患者さんに対して行われる補助循環療法の管理においても、循環状態を把握するための情報の一つとして用いられる場合があります。補助循環療法には、心臓のポンプ機能を補助する装置を用いる方法があり、代表的なものとして次のような治療があります。
- ✓ 大動脈内バルーンパンピング(IABP)
- ✓ 体外式膜型人工肺(ECMO)
これらの治療は、例えば心原性ショックや急性心筋梗塞、重症心不全など、心臓が十分な血液を送り出すことが難しい状態の患者さんに対して実施されることがあります。治療中は、血圧や血液検査、尿量など様々な指標をもとに継続的に循環動態が評価されますが、心エコーによる評価も重要な情報源の1つです。心エコーによって測定されるVTIの測定値やその変化は、心臓から送り出される血液量の変化を把握するための参考情報として活用される場合があります。
VTIが活用される背景
近年、医療現場では、患者さんの循環動態をベッドサイドで迅速かつ非侵襲的に評価する手法の重要性が高まっています。その中で、心エコーを用いた循環評価は実臨床に広く普及しており、循環動態の把握における有用なツールの1つとされています。VTIは、治療介入前後での変化を比較し循環動態の変化を把握する目的で活用されることがあり、近年のポイント・オブ・ケア超音波(POCUS)の普及とも相まって、集中治療室や救急医療の現場で注目される評価指標の1つとなっています。
まとめ
循環動態の評価は複数の指標を総合的に判断して行われますが、VTIはその中の一つとして、補助循環療法を含むさまざまな臨床場面で活用されています。なお、VTIを含む各種指標の解釈や治療方針の判断は、医療従事者が患者さんの状態や他の検査結果などを総合的に評価したうえで行われます。