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疎水性シリコーンドレーンで毛細管現象は起きるのか?

administrator 2026.04.15 2026.04.15

 現場の先生方から「シリコーンドレーンは疎水性なのに本当に毛細管現象でドレナージできているのか?」とご質問を受けることがあります。今回、毛細管現象のメカニズムとシリコーンの特性から「本当にシリコーンドレーン内で毛細管現象が起きるのか?」を考えてみたいと思います。

 

1:毛細管とは
  毛細管(もうさいかん、capillary、毛管)とは、「髪の毛のように細い」管のことで毛細管の

  一端を液体に浸すと、重力に逆らって液体が毛細管の内部に浸透していく現象(毛細管現象)

  が見られます。細い管状物体(毛細管)においても内側の液体が外部からエネルギーを

  与えられることなく管の中を移動する物理現象です。これは、液体の表面張力と液体と管壁の

  間の付着力(濡れやすさ)、そして重力のバランスによって液面が周囲より上昇したり下降

  したりすることで起こります。具体的な例として、植物の給水(根から水を吸い上げ葉まで

  運ぶ仕組み)やアルコールランプやろうそくの芯などがあります。

 

2:毛細管現象のメカニズム
  毛細管現象は、液体の表面張力と、液体が固体表面に付着する力(濡れやすさ)と重力が

  組み合わさることで発生します。
   •表面張力: 液体の分子同士が引き合う力(凝集力)により、液体の表面が縮もうとする力。

        分子同士の凝集力が強いほど表面張力は大きくなる。凝集力を決める要因は

        分子の性質で、それは極性があるかどうか、水素結合を作れるかどうかに

        よります。
   •付着力: 液体分子と固体表面の分子が引き合う力。液体分子が管の壁の固体分子に

       引きつけられる力。

 

 ◆水中に親水性のガラス管を入れると、
   ①水とガラスの親和性(付着力)によって水が管壁に沿って上昇しようとする。
   ②重力は水を下方に引っ張っている。
   ③水の表面張力(凝集力)が、水と空気の界面を小さくする方向に働く。
    ⇒この3つの力が釣り合ったところでメニスカス(三日月)の形状が決まる。

 

     
      

    ※紫の丸印の箇所の角度が接触角に近付くように、付着力によって水が上昇

     するが、接触角の測定は平板上の水平面、毛細管現象は円管内の垂直面と

     いう違いがあるので接触角と同じにはならない。

 

 

◆水中に疎水性の管を入れると、
  ①水と管の親和性(付着力)によって水が管壁に沿って下降しようとする。
   水と疎水性表面の場合は、負の親和性=反発力なので、力は下方向になる。
  ②斜線部分に働いている重力によって、管内の水は上に押し上げられる。
  ③水の表面張力(凝集力)が、水と空気の界面を小さくする方向に働く。
    ⇒この3つの力が釣り合ったところでメニスカスの形状が決まる。

 

   

 

3:シリコーンと水との親和性

  シリコーンポリマーの表面は、水になじみにくいメチル基(疎水性)で覆われ

  ているため表面エネルギーが低く濡れにくい性質を持ちます。この分子構造に

  由来するシリコーンドレーンとしての特長が、柔軟性、温度変化に強い、

  抗血栓性撥水性・離型性などで臨床で利用されています。

 

  

 

4:シリコーンドレーンに対する毛細管現象 

  シリコーンは疎水性が高いため、水系の液体が毛細管現象によって

  管内を上昇することは起こりにくい性質を持ちます。しかし、

  医療用ドレーンにおいては、シリコーン素材でありながら毛細管現象を

  利用して排液を促すとされる製品が存在します。これは、シリコーン

  素材の特殊な加工や形状によって、毛細管現象が起こるように工夫されて

  いるためと考えられますが、疎水性表面をそのままにして、形状で

  毛細管現象が起きるようにすることは難しいという一般論も存在します。

 

    特殊形状加工のシリコーンドレーン
    (開放型、非吸引式:ペンローズ型ドレーン)

   

 

5:比較実験

  実際に水道水(赤食用色素で着色)と牛乳(脂質6.5g、蛋白質7.6g/500ml)、

  そして牛血に細径(Ф3-4mm)のPVCドレーンとシリコーンドレーンを

  入れて毛細管現象が起こるかどうか実験してみました。

 

 ●水道水とPVCドレーン         ●水道水とシリコーンドレーン

      

  ⇒管内の液面は5mm程度上昇        ⇒管内の液面はやや下降

 

 

 ●牛乳とPVCドレーン           ●牛乳とシリコーンドレーン

        

 ⇒管内の液面は10mm程度上昇       ⇒管内の液面は約15mm上昇

 

 

 ●牛血とPVCドレーン            ●牛血とシリコーンドレーン

        

  ⇒管内の液面は10mm程度上昇       ⇒管内の液面は上昇しない

 

 

6:実臨床でシリコーンドレーンに毛細管現象は起きているのか?

  液体と管壁の親和性は、液体と管壁(固体表面)との化学的性質に依るので

  管壁の形状では変わらず、また液体の表面張力や重力も固体の形状では

  変わりません。従って、疎水性のシリコーンドレーンを形状だけで毛細管現象を

  機能させることは難しいと考えられます。シリコーンドレーンで毛細管現象に

  よる排液ができるのは牛乳がシリコーンドレーン内を上昇したように、

  液体(排液)が単純な水ではないからと考えられます。

  また実験でPVCが水でも毛細管現象で水面が上昇した理由は、

  ①PVC分子は塩素が-、炭素が+に寄っているため、水(酸素が-、水素が+)

   と電気的に引き合うから。

  ②可塑剤などの添加物に親水性部分と疎水性部分があるから、ということが

   考えられます。

  実臨床で非吸引型のシリコーンドレーンが排液される力は、実は腹圧や落差圧

  かもしれないことが想起されますが、牛乳がシリコーンチューブ内を上昇した

  ということは、排液の性状によって毛細管現象で排液できる場合もあるという

  ことが言えます。シリコーンと親和性のある液体の場合は毛細管現象で液面が

  上がるので、排液がそのような性状ならば、毛細管現象で排液ができることに

  なります。その場合、より高くまで液面が上がるのは、内腔断面積が小さい

  (管の内壁同士の隙間が狭い)方が有利なので、ペンローズ型ドレーンは

  毛細管現象で排液しやすいといえます。また、一旦挿入部を超えると

  (挿入部が一番高い位置にあるとして)、ドレーン出口が下方に向く為、

  サイフォン効果が働く可能性もあります。開放型だと出口にガーゼを当てるので、

  ガーゼまで排液がとどけばガーゼの毛細管現象で引っ張られる可能性も

  考えられます。いずれにせよ、シリコーンドレーンで毛細管現象が起きるか

  どうかは排液の性状によるということが言えるようです。

 

 

7:もし表面張力がなかったら(水とガラス管の場合)
  付着力により水は壁面を上昇しますが、重力により壁面から少し離れた水は

  上昇しないので、壁面だけが濡れた状態になりメニスカス(三日月型)

  は見えないことになります。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   (監修・協力) 泉工医科工業株式会社 第一開発部 

          横井 洋、勝田聡一

   

   https://www.mera.co.jp/medical/product-info/category/drainage-catheter/

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