酸素療法を正しく理解するためには、「トータルフロー(Total Flow)」という考え方を理解することがとても重要です。
今回はトータルフローについて、できるだけ分かりやすく説明します。
私たちの呼吸のリズム
私たちは普段、意識することなく「呼吸」をしています。
呼吸は、「息を吸う」ことと「息をはく」ことの繰り返しで成り立っています。
息を吸い込むことを「吸気(きゅうき)」、息をはきだすことを「呼気(こき)」と呼びます。

私たちが無意識に行っている自然な呼吸は一定のリズムで行われています。
一般的には、
・吸気時間:約1秒
・呼気時間:約2秒
と言われています。
つまり、1回の呼吸に約3秒かかっている計算になります。このリズムで計算すると1分間に行われる呼吸回数(RR:Respiratory Rate)は約20回/分となります。
吸気時間(Inspiratory time)と呼気時間(Expiratory time)の比率をI:E比と呼びます。
人工呼吸器を使用する場面では、I:E比やRRといった設定項目がよく出てきます。まずは正常な呼吸のリズムや一般的な数値を知っておくことがとても大切です。
1回換気量(TV)
1回換気量(Tidal Volume:VT)とはその名の通り、1回の呼吸で出入りするガスの量を指します。
「成人の1回換気量は一般的に500mL」と耳にしたことがある方も多いと思います。
この500mLという数値は感覚的なものではなく、計算によって求められた目安です。1回換気量は、体重1kgあたり6~8mLが適切とされています。
以下の式で求めることができます。
1回換気量(mL)=6~8(mL/kg)×予測体重(kg)
臨床現場では、実際の体重ではなく、”予測体重”を用いて換気量を設定するケースが多くあります。
予測体重の算出は以下の通り
男性:50+0.91×(身長cm-152.4)
女性:45.5+0.91×(身長cm-152.4)

トータルフロー
ここからは、本題であるトータルフローについて説明します。
トータルフローとは、1分間あたりに供給される混合ガスの総量を指します。(単位:L/分)
前の章で、
・成人の1回換気量:500mL(0.5L)
・1分間の呼吸回数:20回
と学びました。
そのため
「0.5L×20回=10L/分あれば十分では?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これは誤りです。
理由は、供給される混合ガスは吸気のときだけ流れているわけではないからです。
酸素や空気の供給は、吸気中も呼気中も、どちらの時間も、絶え間なく流れ続けています。
一般的な成人では、
・吸気時間:約1秒
・1回換気量:500mL(0.5L)
つまり、1秒間で0.5Lの空気を吸う必要があります。→0.5L/秒
単位を”分”に変換すると 0.5L/秒×60秒=30L/分
したがって、高流量システムで酸素投与を行う場合、成人では「30L/分以上」のトータルフローを確保することが重要となります。
もし、トータルフローが30L/分未満の場合は、不足分を室内気から吸い込むため、吸入酸素濃度(FiO2)が下がってしまいます。

高流量システムデバイスにはトータルフロー表が示されていることが多いため、設定時にはこの表を参考にしながら、患者さんの呼吸状態に適したトータルフローを選択するようにしましょう。


ネブライザー療法

ベンチュリーマスク
まとめ
トータルフローについての理解は深まりましたでしょうか。
この考え方を押させておくことで、酸素療法の理解や、患者さんに適したデバイス選択の判断がより明確になります。
製品情報