電気メスの「対極板トラブル」というと、多くの方が電気メス熱傷を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際の皮膚トラブルを検証していくと、実は熱傷ではないケースが圧倒的に多く見受けられます。
このコラムでは、対極板による皮膚トラブルの実態について、原因別に分けて詳しく解説していきます。
目次
電気メス熱傷の本来の特徴とは?
対極板が皮膚から剥がれかかるなどして、皮膚との接触面積が小さくなることで起こる熱傷です。狭い面積に電流が集中するため、その部分での発熱が大きくなり発生します。これが一般的に「電気メス熱傷」と呼ばれるものです。


最大の特徴は「局所的に焦げた跡が残る」ことです。もし時間差で発赤(赤み)が出たりする場合は、電気メス熱傷ではない可能性が高く、以下のような原因が考えられます。
【原因1】熱傷ではない皮膚トラブル(発赤・かぶれなど)
① ゲルや接着剤による皮膚障害(かぶれ)

対極板の導電性ゲルに含まれる残存モノマーや、対極板の縁に使用されている接着剤などの刺激物が原因で起こる皮膚障害です。
② 強い粘着力による物理的な皮膚障害

一般的に対極板は、剥がれによる熱傷トラブルを防ぐために、ゲルや縁の粘着力を強く設定しています。そのため、使用後に対極板を一気に剥がしたりすると、皮膚が内出血を起こしたり、表皮が剥離したりといった物理的な皮膚障害を起こすことがあります。ゆっくり剥がした場合でも、皮膚が脆弱な患者さんでは同様のトラブルが起こるリスクがあります。
③ 薬液の侵入による皮膚障害
通常は対極板の縁の部分で薬液の侵入を防いでいますが、縁が皮膚から剥がれ、そこから消毒液などの薬液が電極部に流れ込むことで起こる皮膚障害です。侵入した薬液が高周波電流の影響を受けて何らかの化学反応を起こし、皮膚障害を誘発するのではないかと考えられていますが、明確なメカニズムは分かっていません。
対策:薬液がかかる部位や、液が溜まりやすい部位を避けて対極板を貼ることが重要です。
④ コードの圧迫による褥瘡(床ずれ)
対極板を患者さんの体の下に貼った場合など、対極板のコードが体の下敷きになった状態で長時間手術を行うと、コードの物理的な圧迫によって褥瘡を起こすことがあります。
対策:コードが患者さんの体の下にならないよう、対極板を貼る位置や向きに十分注意してください。
【原因2】適切な貼付でも起こり得る「特殊な熱傷」
⑤ コードの断線による熱傷事故

対極板のコードに足を引っ掛けるなどして無理な力がかかり、電極部からコードが引きちぎれてしまう事故です。むき出しになった金属部分が皮膚に接触し、熱傷を起こしてしまった事例が報告されています。
⑥ ソフト凝固の長時間使用による熱傷
ソフト凝固のような「電流量の多い凝固モード」を長時間出力すると、皮膚が炭化するような典型的な熱傷ではなく、低温やけどのような深い熱傷を起こすことがあります。
対策:ソフト凝固など電流量の多い出力モードを使用する際は、メーカーが推奨する「面積の広い対極板」を使用すること。そして、長時間の連続出力を行わないことが重要です。