腹腔鏡下手術(内視鏡下手術)において、限られた術野の中で確実に結節(ノット)を作り、組織を結紮する技術は非常に重要です。体外で作った結び目を術野(体内)へと確実に送り込み、適切な張力で締め上げるために使用される器具がノットプッシャーです。
一見シンプルな器具に見えますが、先端の形状や構造によって操作性や適した結紮方法が大きく異なります。本コラムでは、ノットプッシャーの主な種類と形状、それぞれの用途・特徴について解説します。
形状によるノットプッシャーの分類
ノットプッシャーは、主に先端の構造によっていくつかのタイプに分けられます。
① クローズド型(O型・リング型・穴あき型)

構造・特徴: 先端に小さな孔(ループ)が開いているタイプです。
用途・メリット: 糸を通してから術野に挿入するため、操作中に糸が先端から脱落するリスクが極めて低いのが最大のメリットです。深部や張力がかかる部位でも確実に結び目を押し込むことができます。
留意点: 糸をはじめに穴へ通す手間(スレッディング)が必要となります。
② オープン型(C型・V字・U字・溝型)

構造・特徴: 先端がV字やU字の切込み、または溝状になっているタイプです。
用途・メリット: 糸を先端の溝に引っ掛けるだけで結び目を押し込めるため、着脱が非常にスムーズです。複数の結節を連続して作る際や、迅速な操作が求められる場面に適しています。
留意点: 操作中に張力が抜けると糸が先端から外れやすいため、一定のテンションを維持する熟練度が求められます。
③ アジャスタブル型 / 複合型

構造・特徴: 先端の角度を変えられるフレキシブルなタイプや、C型とO型の複合タイプなどが該当します。
材質と形態による違い(リユーザブルタイプ vs 滅菌ディスポーザブルタイプ)
ノットプッシャーは材質・供給形態によっても使い分けられます。
| 区分 | 主な材質・特徴 | 用途・特徴 |
| 鋼製小物 |
ステンレス製など 洗浄滅菌可能 |
シャープな操作感と適度な重量感。 コストパフォーマンスが高い。 |
| ディスポーザブルタイプ |
樹脂・一部金属など
|
常に新品の滑らかさ。 洗浄滅菌の手間削減。 |
まとめ・選定のポイント
ノットプッシャーは、単に「糸を押し込む」ための道具にとどまらず、「結び目をいかに滑らかに、組織へダメージを与えずに適正な張力で締め上げられるか」が問われる精巧な器具です。
確実性を最優先する場合 ➔ クローズド型
操作のスピードや簡便性を重視する場合 ➔ オープン型
術式(消化器外科、婦人科、泌尿器科など)や術者の好み、結紮する組織の深さや強度の必要性に応じて、最適な形状・タイプを選択することが、安全で確実な手術アプローチへとつながります。