なぜ手術中に心臓を止めるの?
心臓は24時間休むことなく動き続けています。
しかし、心臓血管手術では、心臓の動きが手術の妨げとなってしまうことがあります。そこで、一時的に心臓の動きを止めることで、より安全で正確な手術を可能にします。心臓を止めている間は、心臓への血流を遮断し、人工心肺装置が心臓に代わって全身へ血液を送っています。

心臓はどのように止めるの?
心臓は電気活動で拍動しています。心臓を止めるためには、電気活動が起こらないよう電気の流れを止める必要があります。そこで、心臓を止める役割と心筋を保護する役割を持つ「心筋保護液」と呼ばれるものを、心臓の表面を覆っている冠動脈へ注入します。
心筋保護液には高濃度のカリウムなどが含まれており、心筋細胞がこの高濃度のカリウムにさらされることで電気が流れなくなり、心筋の電気活動を一時的に停止させることができます。また、心臓が止まっている間は心筋へ十分な栄養が届きにくくなります。そこで、心筋保護液によって栄養を供給することで、心筋細胞を保護する役割もあります。このとき、心筋保護液は心筋保護装置などを使用して注入します。

心筋保護装置とは
心筋保護装置は、心筋保護液を患者さんへ送る医療機器です。心筋保護液を注入するときは、注入量や注入圧、温度管理などに注意して行う必要があります。また、心筋保護を誤った方法で行ってしまうと、心筋梗塞や低心拍出量症候群などといった合併症の危険性があります。心筋保護装置を使用することで、投与量の設定や圧力のモニタリング、温度設定などを行うことができ、安全に心臓を止めることができます。
止めた心臓をどうやって動かすの?
心筋保護液の効果は継続的ではありません。そのため、手術時間に応じて20~40分ごとに心筋保護液を追加注入することで、心臓がしっかり保護された状態を維持しています。
心内操作が終わると、再び心臓へ血液を流します。多くの場合、冠動脈に血液が流れることで心臓の電気活動が再開し、心臓は自然に動き出します。必要に応じて一時的な電気刺激(除細動など)を行い、正常なリズムへ戻します。心臓が十分に機能することを確認し、手術は終了します。
