日々の医療現場において、手術を円滑に進めるために欠かせない「鋼製小物」。
鑷子(せっし)や鉗子(かんし)、剪刀(せんとう)と並んで、整形外科や外科手術などの術野展開で頻繁に登場するのが「ラスパトリウム」と「エレバトリウム」です。
この2つは使用される場面が近く、全体的な形状も似ていることから混同されやすい器械ですが、その役割と目的には「明確な違い」があります。今回は、これらの違いについて解説します。
目次
ラスパトリウム(骨膜剥離子 Raspatory):組織を「剥がす」エキスパート
ラスパ
ラスパトリウムは、主に骨に癒着している骨膜や軟部組織を「剥離する(削り取るように剥がす)」ために使用される器械です。
形状と使い方: 先端部分がやや鋭利になっており、骨の表面に沿って滑らせるように押し当てて使う。
種類: 奥に向かって力を加える「押しラスパ」と、手前に引いて剥離する「引きラスパ」があり、術野の状況やストロークの方向によって使い分けられる。
役割: 骨を露出させるための道作りをすること。

エレバトリウム(骨起子・骨膜起子 Elevator):組織を「持ち上げる」サポーター
エレバ

一方、エレバトリウムは、骨や組織を「持ち上げる(挙上・起用する)」、あるいは周囲の組織を「圧排する(よける)」ための器械です。
形状と使い方: テコの原理を利用しやすい形状をしており、ラスパトリーに比べると先端の刃は鈍的(それほど鋭利ではない)なものが多い。
骨と軟部組織の間や、骨片の下に入り込ませて使用する。
役割: 骨片を元の位置に戻すために持ち上げたり、術野を広く確保するために周囲の組織を傷つけないよう保護しながら押さえたりする。

まとめ
| 器械名 | 主な目的 |
アクション |
先端の形状 |
| ラスパトリウム | 骨膜や軟部組織の剥離 | 削る・剥がす | やや鋭利(押し・引きがある) |
| エレバトリウム | 骨の挙上・組織の圧排 | 持ち上げる・よける | 鈍的(テコを利用しやすい) |
複合製品
目的は全く異なる2つですが、実際の手術では「ラスパトリウムで骨膜を剥離し、そこでできたスペースにエレバトリウムを差し込んで組織を持ち上げ、術野を確保する」といったように、セットで連続して使われることが非常に多い器械でもあります。そのため、器械の持ち替えの手間を省くために、両端にそれぞれの機能を持たせた「エレバ兼ラスパ」という製品も存在します。
