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ウィーニングとは
IABP(Intra-Aortic Balloon Pumping:大動脈内バルーンパンピング)は、心臓のポンプ機能低下時において、一時的に循環を補助する治療法の一種になります。心機能が低下しているときにサポートすることで、冠動脈の血流増加や血液を送り出しやすくする役割(後負荷の軽減)を担いますが、この補助は恒久的なものではありません。心機能が回復し循環動態が安定してきたら、段階的にIABPのサポートを減らしていく必要があります。この「段階的にやめていく過程」のことをウィーニング(Weaning)と呼びます。英語で“離乳”を意味するこの言葉は、補助から自立への移行という意味合いで医療現場では使用されています。
ウィーニングの進め方
ウィーニングは、心臓への負担を最小限に抑えるため段階的に進められます。
IABPにおける主なウィーニング方法は、補助比率を下げることです。通常、心臓の拍動1回ごとにバルーンが膨張し補助していた状態(1:1)から、2拍に1回補助(1:2)、3拍に1回補助(1:3)…というように、徐々に補助の頻度を減らしていくことが一般的です。この調整は、医師が心機能の改善具合や血圧といった患者さんの状態を慎重に見極めながら行われます。
ウィーニングに関する評価指標や離脱の判断基準
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- ✓ 心係数(CI)や肺動脈楔入圧(PCWP)の安定
- ✓ 不整脈の消失や血行動態の安定化
- ✓ 適切な尿量が得られているか
また、看護師や臨床工学技士も、患者さんの状態を注意深く観察しながら、チーム全体でサポートにあたります。
ウィーニング中に観察すべきポイント
- ✓ バイタルサインの変化
- ✓ 意識レベルの変化
- ✓ 尿量減少など腎機能の変化
- ✓ 末梢循環(四肢の冷感、チアノーゼの有無)
なぜ慎重に行う必要があるのか
ウィーニングを急ぎすぎると、心臓への負担が急増し、血圧低下や不整脈を引き起こす可能性があります。逆に、必要以上に長く補助を続けると、バルーンカテーテル留置による合併症リスクが高まる可能性も考えられます。そのため、適切な離脱タイミングを判断し、患者さん一人ひとりに合わせたペースで慎重にウィーニングを進めることが重要になります。
まとめ
IABPは、心機能が回復するまでの間、循環補助の役割を果たします。そのサポートを手放すウィーニングは、治療の最終目標である心臓の自立に向けた大切なステップです。チームが連携して患者さんの状態を管理することが、ウィーニング成功の鍵と言えます。