電気メスを使用した医師から「新しい電気メスは少し切れ味が弱い」または反対に「組織が焦げやすい気がする」といった声を聞くことはありませんか?
実は、これらの感覚の違いは電気メスの故障や単なるパワー不足ではなく、「フィードバック機能(組織の電気抵抗に対する出力の制御方式)」の違いに起因していることが多くあります。
本コラムでは、電気メスの「定電力制御タイプ」と「定電圧制御タイプ」の基本的なメカニズムとその臨床的な特徴について解説します。
1. 定電力制御タイプ
メカニズム
切開や凝固を進めると、組織の水分が蒸発し、組織の「電気抵抗」が上昇します。定出力制御タイプは、この抵抗が上がった状態でも、設定された「出力(W)」を保とうとします。そのため、機器内部で自動的に電圧(V)を増加させることで電流値を増やし電力値「出力(W)」を維持する働きをします。

• 臨床での特徴(メリット): 組織の抵抗値(乾燥状態など)が変化しても一定の電力が流れ続けるため、「組織の状態に関わらず、常に一定の切れ味を保てる」という特徴があります。医師にとってはストレスなく切り進められる感覚になりやすいです。
• 臨床での特徴(注意点): 抵抗値が高い組織に対しても高い電圧をかけて無理に電流を流そうとするため、スパーク(火花)が大きくなりやすいです。結果として、組織への熱損傷(侵襲)が高くなる・焦げやすくなる傾向があります。
また、現在でも定電力制御の電気メスは多く存在します。
2. 定電圧制御タイプ
メカニズム
組織の抵抗が上がった際、機器側であらかじめ設定された「最大電圧」を上限として出力をコントロールします。組織抵抗がさらに上がり、その上限電圧に達した場合は、それ以上電圧を上げないため電流値が減少し電力値「出力(W)」も低下していきます。

• 臨床での特徴(メリット): 過剰な電圧がかからないため、不要なスパークや熱の広がりを抑えることができます。これにより、組織への熱損傷(侵襲)を低く抑えることができ、より安全で繊細な手術に適しています。
• 臨床での特徴(注意点): 組織の抵抗が高くなると自然とパワーが落ちるため、昔ながらの電気メスに慣れている医師からは「切れ味が悪い」「組織にメス先が引っかかる」と評価されることがあります。
電気メス選定のポイント
「この電気メスは切れ味が悪い」と感じた場合、それが機器のトラブルなのか、それとも「患者様への熱損傷を抑えるための安全機構(電圧維持)が正常に働いている結果」なのかを切り分ける視点が重要です。
また、各メーカーの機種が「一定の切れ味」を重視しているのか、「組織侵襲の低減」を重視しているのか、その特性を事前に把握しておくことで、術式に応じた適切な機器選定が可能になります。