酸素療法では、必要な濃度の酸素を届けることに加え、吸入する酸素に適切な水分と温度を与える「加温加湿」が重要です。今回は、まず加温加湿の重要性を確認し、主な方法と注意点について説明します。
体に備わる加温加湿のしくみ

私たちが吸い込んだ空気は、気道を通る中で体により加温加湿されています。吸った空気は鼻腔、口腔、咽頭を通過するにつれて、徐々に熱と水分が加えられ、肺に達するころには体温に近い37℃、相対湿度100%の状態になります。このように、上気道は「加温加湿」として働き、気道粘膜や繊毛運動を保ち、分泌物や異物を排出しやすい環境をつくっています。
「相対湿度」と「絶対湿度」
湿度には「相対湿度」と「絶対湿度」があります。相対湿度は、その温度で空気が含むことのできる最大の水蒸気(飽和水蒸気量)に対する割合(%)を示します。絶対湿度は、空気1L中に含まれる水蒸気量をmg/Lで表したものです。空気は温度が高いほど多くの水蒸気を含むことができ、体温37℃では飽和水蒸気量は44mg/Lです。そのため、肺胞に到達する吸気は37℃、相対湿度100%、絶対湿度44mg/Lの状態が目安になります。

加湿の重要性
医療用ガスはほとんど水分を含んでおらず、冷たく乾燥しています。乾燥した酸素が体内に入ると、肺に到達するまでに気道粘液から水分を奪います。その状態が続くと、気道粘膜が乾燥し、痰の粘稠度の増加、固形化や繊毛運動の低下が起こり、痰や異物、細菌を排出しにくくなります。さらに、気管チューブ内腔の狭窄・閉塞、無気肺や肺炎などの呼吸器合併症、気管支への刺激による咳や気管支攣縮につながるおそれがあります。加湿は、気道粘膜と繊毛機能を保ち、分泌物を排出しやすい環境を整えるために重要です。

加温の重要性
加湿を行っても、酸素の温度が低いままでは十分な水分量を含ませることができません。空気が保持できる水蒸気量は温度によって変わり、低温では飽和水蒸気量が少ないため、相対湿度が100%でも絶対湿度は不足しています。そこで温度を上げることで必要な水分量を確保し、加湿効果をさらに高めることができます。また、加湿には、低温の医療用ガスによる体温低下を防ぐことや、吸入時の不快感を軽減する役割もあります。特に気管切開患者では、上気道による本来からだに備わる加温加湿機能を利用できないため、加温を選択することが重要です。
加湿にはどんな方法がある?
ヒューミディファイヤー方式(気泡式)

酸素ガスを滅菌水の中に通し、水蒸気を加える方法です。主に低流量システムで用いられ、相対湿度70~90%程度の酸素を供給します。加温機能はありません。
ネブライザー方式(エアロゾル式)


酸素の流れを利用して空気を巻き込み、滅菌水を微粒子化したエアロゾルとして供給する方法です。相対湿度100%のエアロゾルを供給でき、ヒーター(画像右)と組み合わせれば加温加湿できます。
高流量カニューラ(HFNC)

専用の加湿加温器を用いて、高流量の酸素・空気混合ガスを鼻カニューラから供給します。十分な加温加湿により気道の乾燥を防ぎ、繊毛機能や分泌物の排出を保つことが期待できます。
加温加湿中に気を付けたいこと
温度と加湿状態
設定だけでなく、患者側で適切な温度・湿度が保たれているかを確認します。
回路内の結露
加湿されたガスが冷えると結露が生じます。結露水が患者側へ流入しないよう、ウォータートラップの使用や定期的な排水を行います。
水と回路の清潔管理
加湿水や回路の汚染は感染につながる可能性があります。交換時期や操作方法は施設の基準に従いましょう。
分泌物と呼吸状態
痰の量・性状、咳嗽、呼吸音、酸素化などを観察し、加温加湿が十分かを評価します。
デバイスの装着状態
マスクやカニューラ、気管切開部との接続、通気孔、蛇管の屈曲・閉塞を確認します。
まとめ
酸素療法では、まず適切な加湿によって気道粘膜と繊毛機能を保ち、分泌物を排出しやすい状態にすることが重要です。さらに加温すると、より多くの水分を含ませることができ、十分な加湿効果につながります。特に上気道をバイパスする気管挿管・気管切開患者や、高流量のガスを使用する場合は、温度と湿度を管理することが欠かせません。一方で、すべての酸素療法に加湿が必要なわけではありません。患者の状態とデバイスの特性を踏まえ、適切な方法を選択し、安全に管理することが重要です。
参考資料
大村和也「医師1年目からの酸素療法と呼吸管理 この1冊でしっかりわかる!」株式会社羊土社、2024
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